精油は、心身に与える影響が大きいため、近年さまざまな分野で注目されています。
効用のある芳香成分は、2つの経路で体内に取り込むことができます。
- 香りを嗅ぐ
- 皮膚から吸収する
① 香りを嗅ぐ
精油の芳香成分が嗅覚から脳へ伝わり、心身に効用を与える経路
② 皮膚から吸収する
トリートメントや入浴によって皮膚から芳香成分が吸収され、血液循環により全身を巡る伝達経路
血液循環による経路は、呼吸器・皮膚・消化器の3つがあります。
「消化器」という項目が、飲む行為に該当するんです
ただし、日本アロマ環境協会(AEAJ)では、精油を口から摂取する行為は推奨していません。
それはなぜなのか?
アロマテラピーアドバイザーの資格を持つ私が、理由をわかりやすく解説します
結論を先に言うと、精油を飲む行為は刺激や効用が強く現れ、危険とされているからです。
口から摂取すると大量の精油成分がいっきに体を巡る
精油を飲んだり、食品に混ぜて摂取する方法は、ホームケアでは危険な行為になります。
空間に香りを広げて嗅覚や肺から体内へ取り込む方法とは違い、精油を直接体内へ取り込むからです。
「飲む」行為は、大量の精油成分が体中をいっきに巡ることになります。
心身に与える影響が大きく、体調不良を起こしかねないんです
飲み物に1滴たらして摂取するだけで、下痢や嘔吐の症状が現れた事例もあります。
なので、ホームケアで「飲む」という行為は、危険な行為だというわけです。
内臓に甚大なダメージを与える可能性がある
精油は、口から摂取した場合、のど・食道・胃・小腸などのあらゆる粘膜から取り込まれます。
そこから血管に入り、体内を巡ります
精油の取り扱い注意事項として「原液を直接皮膚につけないこと」という項目があります。
精油の原液は、皮膚や体内にダメージを与える可能性があるんです。
ましてや、体内の粘膜は皮膚よりも敏感な組織のため、より深刻なダメージを負いかねます。
口から精油を摂取した場合、高濃度の精油成分が体内へ入ってきます。
肝臓と腎臓にも大きなダメージや炎症が起こってしまう可能性があるんです
このように、精油の効用を得るよりも悪影響のほうが大きいということを覚えておきましょう。
うがいもダメ
精油を入れた水でうがいをすると、病気やのどの調子が良くなるという記事を目にしますが、これもおすすめしません。
度数の高いお酒で薄めたとしても、口に入れることに変わりはありません
口内の炎症やヒリつきなどが起こりかねないので、うがいも避けたほうが無難です。
飲んでも病気は治せない
「精油を飲むと病気が治る」と提唱している方が一部いますが、そんなことはありません。
たしかに、海外では医者からの処方として、そのように精油が使われることもあります。
しかし、今のところ日本で病気が治ったという事例はないんです。
実は、私の身内が癌に侵されてしまったとき「何とか助けたい」との思いから、精油の力を借りようと考えたときがありました。
当時はまだアロマテラピーの知識が乏しく、インターネットの情報を頼りにしていたんです・・・
そこで見つけたのが、「精油を舌下に垂らして体内へ吸収させたら、癌が消滅した」という記事でした。
「これならいけるかも!」と思い、わらをもすがる気持ちで精油を購入しました。
しかし、一般人が患者へそのような行為をしていいものかと疑問に思い、念のためアロマテラピーの先生に連絡したんです。
今思うと、この行動が正しかったです
返ってきた返事は、「むしろ体調を悪化させるだけだから、絶対にやめてください」ということでした。
当時は「もう、これにかけるしかない!」という気持ちだったので、返答に大きなショックを受けました。
しかし、いま思えば精油を使って病気を治そうとする行為自体が無謀だったなと、つくづく反省しています。
精油で病気を治すことなんて、できるはずないので
体に何らかの効用は与えたとしても、病原を断つことはできないのが精油なんです。
結局私が行った行為は、気持ちが安らぐように病室に香りを広げたこと※と足のむくみを取るためのフットトリートメントでした。
病気を治すことはできなくても、芳香浴法やトリートメント法で患者の気持ちや痛みを和らげることはできます。
精油の正しい使い方で、患者と向き合うべきなんです
飲めると謳っている精油について
精油は、植物から抽出された高濃度の芳香成分です。
純度100%のものが、エッセンシャルオイル(精油)と呼ばれています。
「飲める精油」と謳って販売されている商品もありますが、それも精油に変わりはありません。
なので、飲んでいいとは正直思えません。
たとえば、フランキンセンスなら、どのメーカーのフランキンセンスもほぼ変わりはないので
※産地や気候などで、成分量に多少の違いはあります。
そのメーカーだけが飲めるということはないんです。
精油の知識がある方なら、まっさきに疑問に思うことでしょう。
公に販売せず、インターネットでの販売というところも若干の不信感があります。
やはり、精油を飲むという行為は、やめておいたほうが安全だと思います
間違って口に入れた場合の対処法
お子様によく起こる事例のひとつが、間違って精油を口に入れてしまう行為です。
万が一精油を口に入れてしまった場合は、速やかに大量の水で口の中をすすいでください。
口内に残っている精油を吐き出すためです
粘膜から体内へ吸収された精油成分は、血管へ入り血液循環でいっきに体内を巡ります。
小さいお子様の場合、より精油成分の影響を強く受ける可能性があります。
口をよくすすいだのち、かかりつけの小児科や消化器内科を受診してください
無理に吐かせる行為は、食道やのどなどの粘膜を傷つけてしまう恐れがあります。
焦る気持ちはわかりますが、絶対にやめましょう。
〈まとめ〉飲用せず違った方法でアロマを楽しもう!
精油は正しい使い方をすれば、体に与える効用は大きく、とても有効なものです。
しかし、飲むという行為だけはホームケアにおいてとても危険なことです。
なので、おすすめはしません
海外の医師や専門家の一部で、飲む行為を推奨している方がいますが、それを信じて精油を飲むことはやめましょう。
あくまでも民間療法なので、どんなことがあろうとすべて自己責任になります
「精油って飲めるの?」と興味を持っていた方は、今回の記事を参考にしてください。
というわけで、今回は「精油を飲む行為」について解説しました。
アロマを安全に楽しむうえでの、参考になれば幸いです。